α-1アンチトリプシン欠損症患者を対象とした fazirsiranの第2相試験結果がニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載される

fazirsiran 200 mg投与患者の58%(12人中7人)で線維化の改善を確認

肝臓におけるZ-AAT蓄積量が中央値で83%減少

肝内封入体が69%減少

肝臓の健康状態に関連して臨床的に意義のある各種バイオマーカーが大幅かつ持続的に改善

大阪 & 米カリフォルニア州パサデナ--()--(ビジネスワイヤ) -- 武田薬品工業株式会社TSE:4502/NYSE:TAK)(「武田薬品」)とアローヘッド・ファーマシューティカルズ(NASDAQ: ARWR)は本日、α-1アンチトリプシン欠損症(AATD)に伴う肝疾患の治験薬fazirsiran(TAK-999/ARO-AAT)の第2相臨床試験(AROAAT-2002)の結果がニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)に掲載され、欧州肝臓学会(EASL)の年次総会である2022年国際肝臓学会議の口頭発表で報告されたと発表しました。NEJMの論文は、印刷版に先立ちオンラインで発表されました。表題は「α-1アンチトリプシン欠損症に伴う肝疾患に対するfazirsiran」(Fazirsiran for Liver Disease Associated with Alpha-1 Antitrypsin Deficiency)です。EASLにおける発表の表題は「fazirsiranによる肝内Z-AAT合成減少が成人α-1アンチトリプシン欠損症患者の肝内封入体の減少と組織所見の改善をもたらす」(Reduction of Intra-hepatic Z-AAT Synthesis by Fazirsiran Decreases Globule Burden and Improves Histological Measures of Liver Disease in Adults with Alpha-1 Antitrypsin Deficiency)です。

アーヘン工科大学病院の教授とAROAAT-2002試験の治験責任医師を務め、EASLでデータ発表を行ったPavel Strnad医師(M.D.)は、次のように述べています。「現在、AATDに伴う肝疾患に対する特定の治療薬はありません。AROAAT-2002試験の結果により、これらの患者における既存の肝損傷が、fazirsiranによる治療で意義ある形で改善する可能性を示す複数の証拠が得られました。特に、肝内封入体の減少、門脈炎症の組織所見の改善、上昇した肝酵素値の正常化、肝線維化の改善はすべて、fazirsiranが肝損傷の迅速な改善をもたらすことを示す有望な指標です。また、肝臓を特異的に標的とするsiRNA治療薬に、これまで治療が不可能であった肝疾患に対処できる可能性があるという、この分野で進行中の素晴らしい革新を示すものです。」

Fazirsiranは、変異型α-1アンチトリプシン(Z-AAT)タンパク質の産生を低減する目的で設計されたファースト・イン・クラス薬となる可能性を持つRNA干渉(RNAi)治験薬で、希少な遺伝子性疾患であるAATDに伴う肝疾患を治療できる潜在力があります。Z-AATの蓄積は、AATD患者における進行性肝疾患の原因であると考えられています。炎症性のZ-AATタンパク質の産生が低減することで、肝疾患の進行が阻止されると期待され、肝臓の再生や修復に至る可能性があります。fazirsiranは、AATDの治療薬として、2021 年7月に画期的治療薬に指定(BTD)、2018年2月に希少疾病用医薬品指定を米国FDAから取得しています。

アローヘッドの最高医療責任者(CMO)であるハビエル・サン・マルティン(M.D.)は、次のように述べています。「AATDに伴う肝疾患を持つ患者さんを対象とした非盲検第2相AROAAT-2002試験から得たfazirsiran治療の素晴らしいデータは、治療効果と、肝臓の健康状態を示す複数の下流マーカーに改善をもたらす可能性を示しています。当社は、第2相SEQUOIA試験も終えつつあり、このより大規模なプラセボ対照試験でfazirsiranの可能性をさらに評価できるものと期待しています。fazirsiranは、試験対象となったすべての患者で高いレベルの活性を示し、RNA干渉経路が遺伝子発現を確実かつ一貫性をもって抑制する方法として活用でき、さまざまな遺伝子性疾患の患者さんに好影響を与える可能性を示しています。」

武田薬品Gastroenterology Therapeutic Area Unitのヘッドを務めるChinwe Ukomadu(M.D.、Ph.D.)は、次のように述べています。「これら初期結果は、fazirsiranのようなRNAi療法が、AATDに伴う肝疾患の患者で肝疾患の改善をもたらす可能性を示しており、当社はfazirsiranがいつの日か、肝移植を回避することに役立つと期待しています。当社は、アローヘッドとの良好な連携を継続し、消化器系疾患領域で長い歴史を持つ武田薬品の革新成果を適用して、fazirsiranの第3相試験を開始できるものと期待しています。」

第2相AROAAT-2002試験について

AROAAT-2002(NCT03946449)は、第2相パイロット非盲検複数用量試験で、AATDに伴う肝疾患と試験開始時点での肝線維化を有する患者16人を対象に、fazirsiranに対する反応を評価するものです。患者は3つのコホートに組み入れました。適格例はすべて、投与前と試験終了時に生検を受けました。治療を受けた患者には、非盲検拡大試験(OLE)で治療を継続する機会を提供しました。OLEを含め、fazirsiran治療の開始後6カ月および18カ月(コホート1および1b)、12カ月および24カ月(コホート2)の時点で中間評価を行いました。

有効性の結果

すべての患者(16人)で、肝臓における総変異型AATタンパク質(Z-AAT)の蓄積量が低下しました(24週目または48週目における変化率の中央値:−83.3%、95%信頼区間:−89.7~−76.4)。すべてのコホートで、血清中Z-AAT濃度の平均値のベースラインからの大幅な低下が観察され、6週目で200 mgコホートでは−90±5%が、100 mgコホートでは−87±6%が最低値でした。肝臓内Z-AAT濃度の低下に伴い、組織学的な炎症所見の改善が認められました。

ほとんどの患者で、ベースライン時の組織PAS-D検査で肝内封入体が多く認められました(平均スコア7.4、スコア範囲0~9、スコアが高いほど肝内封入体が多いことを示す)。治療後、すべての患者で肝内封入体が減少し、24週目または48週目の平均スコアは2.3にまで低下しました(69%の低下)。

肝損傷のバイオマーカーも低下しました。ベースライン時点の平均ALT濃度は、全コホートとも正常値上限を超えていました。治療後、16週目から52週目にかけて全コホートでALT濃度が低下しました。ベースライン時点でALT濃度が正常範囲の上限を超えていた患者12人は全員、52週目で正常濃度まで低下していました。

200 mgの投与を受けた患者12人(コホート1および2)のうち、肝硬変が認められていた2人を含む7人で線維化が1段階以上改善し、100 mgの投与を受けた患者(コホート1b)で生検が評価可能な3人ではこのような改善は認められませんでした。コホート2の患者2人で、ベースラインから48週目までに線維化が進行しましたが(いずれもF2からF3に進行)、いずれも治療によりPAS-D検査における肝内封入体の著しい減少(スコアはベースライン時が9および4、48週目がいずれも0)と、ALTおよびγ-グルタミルトランスフェラーゼの濃度低下を示しました。

安全性の結果

Fazirsiranは全般的に忍容性が良好でした。1.5年の試験期間中、死亡例、fazirsiranの投与中止例、一時中断例は認められませんでした。fazirsiranの初回投与後に発現または悪化した有害事象のうち、最も発生頻度が高かったのは関節痛と血中クレアチンキナーゼ濃度の上昇でした。有害事象の頻度や重症度に関し、用量依存の明らかな上昇は認められませんでした。重篤な有害事象はコホート1および2の4人で4件報告されましたが、いずれも重症度は中等度でいずれも回復し、4人の患者はいずれも延長試験でfazirsiranの投与を受けました。

現在のところ、投与や試験の中止に至った重大な呼吸器系有害事象は認められていません。試験参加時点でAAT強化療法を受けていた患者6人中4人は肺気腫の既往がありましたが、増悪を報告した患者はいませんでした。

武田薬品とアローヘッドの協業・ライセンス契約について

2020年10月、アローヘッドと武田薬品は、fazirsiranの開発に向けた協業・ライセンス契約を発表しました。契約の条件に基づき、アローヘッドと武田薬品はfazirsiranの共同開発を行い、承認が得られた場合、米国では利益を折半しながら共同で商業化に当ります。米国以外では、武田薬品が世界的な商業化戦略を主導し、fazirsiranの独占的販売権を取得し、アローヘッドは売上高に対する20~25%の段階的なロイヤルティーを受け取ることができます。アローヘッドは、3億ドルの契約一時金を受領し、開発、申請、販売に応じたマイルストーンとして最大7億4000万ドルを受け取る権利を有します。

α-1アンチトリプシン欠損症について

α-1アンチトリプシン欠損症(AATD)は希少な遺伝子性疾患で、小児患者と成人患者では肝疾患、成人患者では肺疾患を伴うことがあります。AATDの有病率は、米国では3000~5000人に1人、欧州では2500人に1人と推定されています。αアンチトリプシン(AAT)は主として肝細胞で合成、分泌されるタンパク質です。AATの機能は、正常な結合組織を分解する酵素の阻害です。本疾患で最も多く見られるZ型遺伝子変異では、1つのアミノ酸が置換され、その結果としてタンパク質が正しく折りたたまれません。この変異タンパク質は十分に分泌されず、肝細胞内に蓄積され、小球を作ります。その結果として肝細胞が損傷を受け続け、線維化や肝硬変が引き起こされ、肝細胞がんのリスクが高まります。

ホモ接合型のPiZZ遺伝子型を持つ患者の場合、機能性AATが重度に欠乏することで肺疾患や肝疾患をもたらします。肺疾患は多くの場合、AAT強化療法により治療します。ただしAAT強化療法は肝疾患に対しては効果がなく、肝疾患の症状に特効がある治療法は存在しません。現在、利用可能な唯一の治療法は肝移植ですが、合併症発現率や死亡率が高く、大きな未充足ニーズが存在します。

武田薬品工業株式会社について

武田薬品工業株式会社は、日本に本社を置き、自らの企業理念に基づき患者さんを中心に考えるというバリュー(価値観)を根幹とする、グローバルな研究開発型のバイオ医薬品のリーディングカンパニーです。武田薬品は、「すべての患者さんのために、ともに働く仲間のために、いのちを育む地球のために」という約束を胸に、革新的な医薬品を創出し続ける未来を目指します。研究開発においては、オンコロジー(がん)、希少遺伝子疾患および血液疾患、ニューロサイエンス(神経精神疾患)、消化器系疾患の4つの疾患領域に重点的に取り組むとともに、血漿分画製剤とワクチンにも注力しています。武田薬品は、研究開発能力の強化ならびにパートナーシップを推し進め、強固かつ多様なモダリティ(創薬手法)のパイプラインを構築することにより、革新的な医薬品を開発し、人々の人生を豊かにする新たな治療選択肢をお届けします。武田薬品は、約80の国と地域で、医療関係者の皆さんとともに、患者さんの生活の質の向上に貢献できるよう活動しています。詳細については、https://www.takeda.comをご覧ください。

アローヘッド・ファーマシューティカルズについて

アローヘッド・ファーマシューティカルズは、疾患の原因となる遺伝子の働きを止めることで難病を治療する医薬品の開発に当たっています。アローヘッドの治療薬は、RNAケミストリーの広範なポートフォリオと効率的な送達方式を活用して、RNA干渉機構を誘因し、標的遺伝子の迅速で徹底的かつ永続的なノックダウンを誘発します。RNA干渉(RNAi)は、生細胞内に存在する機構の一種で、特定遺伝子の発現を阻害することで特定タンパク質の産生に影響を及ぼします。RNAiをベースとするアローヘッドの治療薬は、この生来の遺伝子サイレンシング経路を活用しています。詳細情報については、www.arrowheadpharma.comをご覧いただくか、ツイッター(@ArrowheadPharma)で当社をフォローしてください。当社のEメールリストに登録し、ニュースを直接受け取るには、http://ir.arrowheadpharma.com/email-alertsにアクセスしてください。

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本ニュースリリースは、1995年米国民事証券訴訟改革法の「セーフハーバー」条項の定義による将来見通しに関する記述を含みます。本リリースにおける歴史的情報を除く全ての記述は、将来見通しに関する記述と見なされる可能性があります。前述の一般性を制限することなく、「可能性がある(may)」、「だろう(will)」、「期待する(expect)」、「信じる(believe)」、「予想する(anticipate)」、「望む(hope)」、「意図する(intend)」、「計画する(plan)」、「企画する(project)」、「あり得る(could)」、「見込む(estimates)」、もしくは「継続する(continues)」などの用語は、そうした将来見通しに関する記述を特定するために用いられます。また、当社の将来の財務業績、事業の傾向、製品パイプラインや製品候補に関する予測(薬事申請や臨床プログラムの結果の予想を含む)、他社との連携の見込みや利点、その他の将来の出来事や状況に関する評価の記述は、将来見通しに関する記述です。これらの記述は現時点の当社予測に基づくもので、本リリースの日付時点までのことについてのみ言及するものです。当社の実際の業績は、さまざまな要因や不確定要素により、いずれかの将来見通しに関する記述で記されたものと大幅に悪い意味で異なる場合があり、それらの要因や不確定要素には、現在進行中のCOVID-19パンデミックが当社事業に及ぼす影響、当社製品候補の安全性および有効性、規制当局による判断やその時期、当社臨床プログラムにおける薬事承認手続きの遅れの期間とその影響、当社事業に対する当社の資金調達能力、将来のマイルストーン支払いまたはライセンス料を受領できる可能性とその時期、当社の科学研究の今後の成功、医薬品候補を成功裏に開発し商業化する当社の能力、臨床試験の開始時期および完了時期、当社が参加している市場における急速な技術変革、当社の知的財産権の執行、当社の最新のフォーム10-K年次報告およびその後のフォーム10-Q四半期報告その他米国証券取引委員会に随時提出した資料に記載されたその他のリスクや不確定要素が含まれます。当社は、新たな事象や状況を反映するために、将来見通しに関する記述を更新または修正する義務を負うものではありません。

References:

Strnad P, Mandorfer M, Choudhury G, et al. Fazirsiran for Liver Disease Associated with Alpha1-Antitrypsin Deficiency [published online ahead of print, 2022 Jun 25]. N Engl J Med. 2022;10.1056/NEJMoa2205416. doi:10.1056/NEJMoa2205416.

Strnad P. Reduction of intra-hepatic Z-AAT synthesis by fazirsiran decreases globule burden and improves histological measures of liver disease in adults with alpha-1 antitrypsin deficiency. Poster presented at: The International Liver Congress; June 2022; London, UK (fazirsiranによる肝内Z-AAT合成減少が成人α-1アンチトリプシン欠損症患者の肝内封入体の減少と組織所見の改善をもたらす)

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