東芝:超低消費電力マイコン向け新動作原理トランジスタの開発

SSDM2014

東京--()--(ビジネスワイヤ) -- 東芝は、超低消費電力マイコン向けに新動作原理を用いた2種類のトンネル電界効果トランジスタ(TFET)を開発しました。本トランジスタをそれぞれ適した回路に適用することで、汎用CMOSプロセスを用いつつ、既存の電界効果トランジスタ(MOSFET)では実現困難な超低消費電力チップセットの実現が可能となります。本成果は、9月9~11日(日本時間)に茨城県つくば市にて開催された半導体国際会議SSDMにて、3件発表しました。
なお、うち2件は連携研究体グリーン・ナノエレクトロニクスセンター(GNC)が実施するグリーン・ナノエレクトロニクスのコア技術開発に基づく独立行政法人産業技術総合研究所(AIST)との共同研究の成果です。

近年のスマートフォンに代表される電子モバイル製品の市場拡大および情報量の増大に伴い、チップの低消費電力化に対する要求が急速に増しております。このような中、マイコンなどの回路構成素子として、従来のMOSFETとは異なる動作原理をもつTFETに対する注目が集まっています。TFETは、素子のオン/オフ機構に電子のトンネル効果を利用することから、原理上極めて急峻なオン/オフ特性が得られます。このため、より低い電圧での動作もしくは低いオフリーク電流の実現が可能となり、超低消費電力回路向けの素子として採用に向けた研究が活発化しています。

他方、TFETはトンネル効果を利用するため、MOSFETに対し高いオン電流が得られにくいという課題があります。そこで、素子の材料や構造を変えることでトンネル効率を上げるという試みがなされています。とりわけ昨今では主に高速動作製品向けにIII-V族化合物半導体を適用し、MOSFETに迫るオン電流を追求するという研究が盛んになされるようになりました。ところが、現在の汎用CMOSプロセスで採用されていないこのような新規技術の導入は、製造プロセスの複雑さや素子の特性バラつきを増大させる要因となり、TFETの早期実用化が困難になるという課題がありました。

そこで当社は、TFETを適用する回路を限定し、汎用CMOSプロセスを用いてそれぞれに特化した性能をもつTFET素子を開発しました。これによりTFETの早期実用化が可能となります。具体的には、極めて低いオフリーク電流を実現しつつ、バラつきとオン電流のバランスを最適化した主にLogic回路向けのTFETと、バラつきの抑制に特化した主にSRAM回路向けのTFETの2種類を開発しました。両者ともにSi系TFETとしての性能を最大限引き出すため、縦方向接合の構造を採用しました。これは、トンネル接合となるソースとチャネル領域を縦方向に形成することで、ゲート電界と平行にトンネル電流を発生させることができます。このため、TFET構造として一般的な横方向接合より、効率的なゲート電界による制御が可能となります。

Logic向けのTFETは、接合形成にSiのエピタキシャル成長技術を活用することで、均一かつ急峻な接合の実現を可能とし、バラつきの抑制とオン電流の向上を達成しました。特に、エピタキシャル成長中に炭素(C)や燐(P)の不純物を添加することで、その後の製造プロセス(熱負荷)による接合の劣化(鈍化)を抑えることが可能であることを実証しました。また、さらなるオン電流の向上を狙い、エピタキシャル層としてSiGe材料の導入を行いました。SiGeはSiよりも小さなバンドギャップを持つためトンネル効率を上げオン電流を向上させることが可能となります。ただし、同時にオフリーク電流の上昇を伴う懸念があることから、今回SiとSiGeを組み合わせたヘテロ接合を採用しました。この際、CMOS動作を考慮し、N型TFETとP型TFETそれぞれに対するSiGe位置の最適化を実施し、Si TFETと同等のオフリークを維持したまま約2桁のオン電流向上を達成しました。エピタキシャル技術やSiGe材料はすでに汎用CMOSプロセスで採用されているものであることから、シームレスな製品展開が可能です。

一方、SRAM向けに究極的な素子のバラつき対策として、当社発案の新しいTFET構造であるソース接合レスTFETを開発しました。TFETはソースとチャネルの接合状態によって大きく特性が変動するため、接合形成プロセスによるバラつきの増加が課題となっておりました。そこで当社は、物理的なチャネルは形成せず、一様なソース領域上にゲート電極を形成する新たなTFET構造を提案しました。チャネルはソース領域中にゲート電界によって電気的に形成されるため、従来の物理的なチャネル形成によるバラつきを一切排除することが可能となります。今回、サンプルを試作し動作実証を行い、従来のTFETに比べ素子のバラつきを半分に抑えることに成功しました。

今回開発した2種類のTFETと既存MOSFETをひとつのマイコンに集積化することで、トータルの消費電力を1/10以下に低減したチップセットを、2017年頃の製品化を目指し開発していきます。

Contacts

【お問い合わせ先】
株式会社東芝 セミコンダクター&ストレージ社 企画部 広報・IR担当
玄地 恵/山路 航太
Tel: 03-3457-3576
E-mail: semicon-NR-mailbox@ml.toshiba.co.jp

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