東京--(BUSINESS WIRE)--(ビジネスワイヤ) -- PHC株式会社 バイオメディカ事業部(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:中村 伸朗、以下「バイオメディカ事業部」)は、本日、独自の高精度In-Lineモニタリング技術(*1)により、培養中の細胞の代謝変化をリアルタイムに可視化する研究用ライブセル代謝分析装置「LiCellMo(リセルモ)」を、国内向けには9月より、海外向けには10月より販売開始しますので、お知らせいたします。
これまで治療が困難であった疾病に対する新しい治療法として細胞遺伝子治療(CGT)(*2)が注目される中、CAR-T療法(*3)をはじめとした細胞医薬品の研究開発が急速に進んでいます。その中で、がん免疫研究やiPS細胞をはじめとする幹細胞研究(*4)などでは、細胞の代謝(*5)状態を把握することが重要とされています。また、高品質な細胞医薬品を製造するためには、細胞の増殖や分化の状態を正確に評価し、最適な培養環境を開発することが求められています。さらに、二次元培養法(*6)からオルガノイドなどの三次元培養法(*7)への移行を含め、ますます複雑化する細胞培養において、代謝変化を正確に分析する必要性がいっそう高まっています。
一方で、培養作業においては、細胞の状態を評価する基準が研究者の技量や経験に依存しているなど再現性の課題があります。また、従来のサンプリング手法では、培地の一部を採取して細胞の代謝や品質を評価することが可能ですが、測定データが離散的な「点」であるため細胞の経時的変化を把握することが困難でした。さらに、培地をサンプリングする際にコンタミネーション(汚染)リスクも発生します。そのため、客観的で定量的な評価指標をもとに、培地を都度採取することなく細胞の状態を連続的に測定する手法の確立が求められています。
この度発売するライブセル代謝分析装置「LiCellMo」は、研究者が直面するこれらの課題を解決し、新たなモダリティ(治療手段)の早期実用化に貢献することを目指して開発された製品です。本装置は、細胞の重要な代謝経路を連続的なデータとして測定し、これまで観察できなかった細胞の状態の経時的変化を精緻に捉えることができます。これにより、研究における新たな知見の獲得や治療の進展へ寄与します。また、測定に必要な備品は汎用品を使用し、CO2インキュベーター内に設置することで、通常の培養環境を変更することなく容易に導入可能です。そのため、従来の細胞培養の課題を解決するための新たなソリューションとして、研究者の皆様に広くお使いいただけます。
<本製品の特徴> |
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本製品は、2023年より国内外の研究機関や製薬企業等の多くの研究者にご紹介し、ベータテストを実施してまいりました。米国オハイオ州シンシナティ小児病院医療センター消化器・肝臓・栄養部門で人工多能性幹細胞(iPSC)から肝臓オルガノイドの作製に携わる武部貴則准教授/副センター長が主宰する研究室に所属する木村昌樹リサーチアソシエイトは、「細胞培養の従来の代謝測定法の問題点は、各時点の測定値の差が大きすぎるため、代謝の動的変化を検出が難しいことです。『LiCellMo』の使用を通じて、代謝挙動の変化を把握できるので、私たちの肝臓モデルの改良や細胞分化プロトコルの作成に非常に役立っています。」と述べており、「LiCellMo」を使用することで、自身が作成した肝臓オルガノイドからこれまでよりもはるかに詳細な情報を収集できたと評価しています。
PHC株式会社で取締役及びバイオメディカ事業部長を務める高魚 力は、次のように述べています。「この度の『LiCellMo』の発売に際して、非常に嬉しく思います。当社は、診断薬事業部の主力商品である血糖値センサーのコア技術を活用し、細胞の代謝状態を示す指標であるグルコースと乳酸の連続測定を実現するIn-Line モニタリング技術へと進化させました。同技術をコアとして開発した『LiCellMo』は、がん免疫研究や幹細胞研究、さらにはそれらの製剤化に向けた製造プロセス検討において、これまでの代謝研究では得られなかった新しい知見を獲得する機会を研究者の皆様に提供できると確信しています。PHCグループの診断薬事業とバイオメディカ事業間におけるシナジーが『LiCellMo』の開発で結実し、当社が細胞・遺伝子治療領域へ本格的に参入するための足掛かりになると考えています。本製品の発売を機に、細胞・遺伝子治療の早期普及に向け、細胞医薬品製造プロセスにおけるQCD(品質、コスト、納期)課題に応える革新的なソリューション創出をさらに加速し、モダリティの進化への貢献を目指してまいります。」
※注釈
(*1) 培地に常時浸漬させ、サンプリングすることなく培地中の細胞代謝物質を連続測定する技術
(*2) Cell and Gene Therapyの略
(*3) 通常の免疫機能だけでは完全に死滅させることが難しい難治性のがんに対する治療法。患者自身のT細胞を取り出し、特殊キメラ抗原受容体(CAR)と呼ばれる特殊なタンパク質を作り出すことができるよう遺伝子組換えの技術を用いて改変したCAR-T細胞を患者に投与する治療法
(*4) 分裂して自らと同じ細胞を作る能力と、別の種類の細胞に分化する能力を持つ細胞に関する研究
(*5) 培養細胞内で起こり、生命維持に必要なエネルギーを作り出す一連の反応
(*6) 細胞を平面状の表面で培養する方法。通常、培養皿やフラスコなどのプラスチック製の容器の底面に細胞を付着させて行う
(*7) 細胞を立体的な構造で培養する方法。三次元の基質上で細胞を成長させられ、自然の組織構造に近い形態で培養される
<PHC株式会社・バイオメディカ事業部について>
1969年に設立されたPHC株式会社は、グローバルヘルスケア企業として事業を展開するPHCホールディングス株式会社(コード番号6523 東証プライム)の日本における事業子会社です。ライフサイエンス事業を担うバイオメディカ事業部では、事業ブランド「PHCbi」を掲げ、超低温フリーザーやCO2インキュベーターをはじめとした研究・医療支援機器及びサービスの提供を通じて、約110の国と地域における研究者と医療従事者への支援に取り組んでいます。
www.phchd.com/jp/biomedical
<PHCホールディングス株式会社について>
PHCホールディングス株式会社(証券コード 6523 東証プライム)は、グローバルに展開する日本発のヘルスケア企業です。傘下にPHC株式会社やアセンシア ダイアベティスケアホールディングス、エプレディアホールディングス、株式会社LSIメディエンス、ウィーメックス株式会社、メディフォード株式会社などを置き、糖尿病マネジメント、ヘルスケアソリューション、診断・ライフサイエンスの事業領域において、開発、製造、販売、サービスを行っています。2023年度のグループ連結売上収益は3,539億円、世界125以上の国と地域のお客様に製品・サービスをお使いいただいています。PHCグループはPHCホールディングス株式会社とその事業子会社の総称です。
www.phchd.com